古河工場から始まる日野の逆襲!次世代EVとスマート生産の全貌
日野 自動車 古河 工場の正門を通過した瞬間、かつてのトラック製造現場にあったはずの耳をつんざく金属音と重油の匂いは消え去っていた。視界に飛び込んでくるのは、床面を滑るように自律走行する無人搬送車(AGV)の群れと、白を基調としたクリーンな空間。日本の物流インフラを支えてきた商用車製造業がかつてない変革期を迎える中、茨城県古河市の広大な敷地に佇むこのメガファクトリーは、過去の試練を乗り越え、全く新しい産業の鼓動を鳴らし始めている。
信頼回復と抜本的な組織改革の陣頭指揮を執る小木曽聡社長のもと、日野 自動車 古河 工場は従来の組み立て工場の枠組みを完全に脱ぎ捨てた。日野自動車株式会社がトヨタ自動車株式会社との連携を再定義し、脱炭素と電動化へのシフトを急ピッチで進める今、この巨大拠点はいかなる変貌を遂げたのか。水面下で進む極秘プロジェクトと、最前線の現場で起きている地殻変動を追った。
【独占スクープ】次世代EV商用車の量産計画と極秘ラインの胎動

関係者への取材で明らかになったのは、古河工場の深部で進められている次世代EV商用車の専用混流生産ラインの全貌だ。エンジン車とバッテリーEV(BEV)を同一ライン上で柔軟に組み立てる革新的なハイブリッド型セル生産方式が本格稼働している。バッテリーパックの自動組み付けステーションには最新鋭の産業用ロボットが整然と並び、ミリ単位の精度で巨大なモジュールをシャシーへと統合していく。
現場エンジニアの一人は声を潜めて語る。「航続距離と積載効率のトレードオフを打破する新型プラットフォームのテストは最終段階に入っている。古河で培ったモジュール化技術は、今後の日野の命運を握る」。都市間輸送を担う大型トラックからラストワンマイル配送車まで、商用EVの概念を覆すモデルがこの地から市場へと放たれようとしている。
スマートファクトリー化の極致:人とAIが融合する新時代の組み立て現場

日野自動車古河工場を語る上で欠かせないのが、徹底したスマートファクトリー化への挑戦だ。工場の天井一面に張り巡らされた高精度センサーとカメラが、組み立てラインのあらゆる工程データをリアルタイムで収集。AIがボルトの締め付けトルク値や塗装の微細なムラをミリ秒単位で解析し、不具合の予兆を事前に検知する。
熟練工の勘と経験に依存していた技能継承の壁も、デジタルツイン技術によって打ち破られつつある。作業員の身体負荷を低減するパワードスーツの導入や、ARグラスを用いた配線作業のナビゲーションなど、人手不足が深刻化する日本社会を見据えた現場環境が完成していた。単なる自動化ではなく、作業者が最も効率的かつ安全に能力を発揮できる「人間中心の自動化」が貫かれている。
日野・プロフィアと日野・レンジャーが挑む脱炭素と電動化の分水嶺

長年、日本の幹線輸送を支え続けてきた大型トラックの日野・プロフィア、そして中型市場のベストセラーである日野・レンジャー。この二大フラッグシップモデルも、古河工場の最新ラインで抜本的なアップデートを遂げている。高効率なディーゼルエンジンのさらなる低エミッション化はもちろんのこと、ハイブリッド(HEV)や水素燃料電池(FCEV)を見据えた共通プラットフォームの適用が進む。
「トラックを止めるわけにはいかない」。物流現場の過酷な運用に耐えうる耐久性を維持しながら、いかにしてCO2排出量をゼロに近づけるか。重量物輸送の現場でプロフィアが背負う責任と、都市物流を支えるレンジャーの俊敏性。古河工場は、この相反する要求を最新の製造エンジニアリングによって見事に両立させている。
トヨタとの連携再強化がもたらすサプライチェーンマネジメントの激変
工場の裏手にある広大な物流ヤードでは、部品の入荷から完成車の出荷に至るまでのサプライチェーンマネジメントが劇的に刷新されていた。トヨタ自動車株式会社が培ってきたカンバン方式をベースに、クラウドでサプライヤーと直結したリアルタイム受発注システムを統合。過剰在庫を極限まで削ぎ落としつつ、突発的な部品供給途絶にも耐えうる強靭なネットワークを構築している。
トラック一台を構成する数万点に及ぶ部品のトレーサビリティは完全にデジタル化され、万が一の品質トラブルにも即座にピンポイントで対応できる体制が整った。系列を超えたオープンな調達戦略と厳格な品質管理基準の融合が、日野のモノづくりに対する市場の信頼を再び強固なものにしている。
茨城県古河市から世界へ発信する「マザー工場」としての新使命
圏央道や主要幹線道路へのアクセスに優れた茨城県古河市。この地にある古河工場は、単なる国内向け生産拠点ではない。世界各国の生産拠点を指導し、最先端の製造技術や品質基準をグローバルに伝播させる「マザー工場」としての重責を担っている。
東南アジアや北米をはじめとする海外拠点の現地技術者たちが古河に集まり、EV化に伴う高電圧システムの取り扱い技術や、ロボットティーチングのノウハウを吸収して自国へと持ち帰る。古河で確立された高効率な生産ラインの設計図は、デジタルデータとして世界中の工場へ即座に共有され、日野のグローバル戦略を一手に牽引している。
商用車製造業のゲームチェンジを牽引できるか:小木曽体制の覚悟
商用車の世界はいま、100年に一度の大地殻変動の渦中にある。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアード、電動化)の波が押し寄せるなか、脱炭素社会の実現とドライバー不足の解消という重い課題がのしかかる。小木曽聡社長が率いる日野が選んだ道は、逃げのない技術革新と、現場起点での抜本的な組織改革だった。
巨大な車体を黙々と形作っていく自動化ラインの光景は、過去の混乱を断ち切り、新たな地平へ踏み出した同社の強い決意を何よりも雄弁に物語っている。古河工場から放たれる一台一台のトラックが、日本の、そして世界の物流の未来をどう塗り替えていくのか。商用車製造業の歴史を塗り替える闘いは、いま最も熱い局面を迎えている。 (出典: 日野 自動車 古河 工場(Yahoo!ニュース))